アメリカの加速主義 バイデン政権、検査キット5億個を無償配布 オミクロン株対策

アメリカで新型コロナウイルスのオミクロン変異株が急拡大する中、ジョー・バイデン大統領は21日、簡易検査キット5億個を無償配布する、新たな対策を発表した。
アメリカではオミクロン株が主流になっており、新規感染者の約4分の3で確認されている。
バイデン氏はホワイトハウスの演説で、検査を拡大し、軍に病院を支援させる方針も明らかにした。一方、ロックダウンは予定していないと述べた。
「今は2020年3月とは違う」とバイデン氏は言い、「私たちは備えができている。知識も増えている」と述べた。

 

新たな対策の中身
新たな対策では、検査キットを来年1月から希望者全員に無償配布する。検査キットは現在7~15ドル(約800~1700円)で薬局で販売されている。高価だとの批判が出ているほか、一部地域では入手が困難になっている。
国内各地の病院には、今後2カ月かけ、軍の医療関係者1000人を派遣する。現行の5倍に当たる派遣規模となる。
連邦当局による検査会場の設置も始める。オミクロン株の感染者が急増しているニューヨーク市が最初で、クリスマスまでに開設の予定。
自分の身を守るよう要請
オミクロン株は先月、アフリカ南部で最初に確認された。いまや世界各地に広がっている。
アメリカにおけるオミクロン株の関連死は、これまで1人だけとされている。テキサス州ハリス郡の住民(50)で、基礎疾患があり、ワクチンは未接種だった。
アメリカの成人のワクチン接種完了率は73%に達しているが、当局は未接種者について懸念している。
バイデン氏はこの日の演説で、ワクチンを接種し、自分を守るよう国民に要請。
ワクチン接種後にも感染する人がいると認める一方、未接種だと「入院や、命を失いさえする確率が格段に上がる」と強調した。
バイデン氏は演説中、マスクは着けず、口に手を当てて咳(せき)をした。
バイデン氏はまた、クリスマスを祝うことは、ワクチン接種者やCOVID-19にさらされたことがない人は可能だと述べた。
新たな対策については、「ワクチン未接種者が保健システムにかけている負担を軽減」するものだと主張した。
バイデン氏は演説の中で、ワクチン接種の指示が「不評」を買っていると認めた。そのうえで、「政権として指示を出したのは、みなさんの人生を管理するためではない。あなたと他人の人生を救うためだ」と述べた。
米政府は最近、従業員100人以上の国内事業所に対し、従業員のワクチン接種を義務付ける方針を明らかにした。連邦裁判所はこれを有効と認めたが、反対派が最高裁に訴える可能性がある。
バイデン氏はこの日の演説で、珍しくドナルド・トランプ前大統領をたたえた。トランプ氏は19日、テキサス州ダラスの集会でブースター(追加)接種を受けたと述べ、聴衆からブーイングを浴びていた。
バイデン氏は、「彼と私の意見が一致する、数少ないことの1つかもしれない」と話した。
大統領報道官が後悔
ロイター通信によると、アメリカでは今月に入って、新型ウイルスの感染者が57%増加している。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官はこの日、政府による検査キット大量配布のアイデアを、つい2週間前に冷笑したことへの後悔を表明した。
サキ氏は今月6日、イギリスやシンガポールのように自宅検査キットを配布しないのかと記者から問われ、「アメリカ人全員にキットを送るというのか? 全員が検査を受けたらどうなるのか? いくらかかり、その後はどうなるのか?」と返答していた。